日曜の夕方、一時帰宅した家人と、息子と、着替えの紙袋を車に積んで病院へ。
「また来週あおうね」と言って息子に手を伸ばす家人。
息子とふたりで家に戻る、15分程度の無言の道程。
ついこないだまではまだまだ明るい時間帯だったのに、今は車列のライトが眩しい。
こちらは別に急ぐ理由もないのに、後方から追い立てられる国道のバイパス。
暗く静かな車内に流れる息子向けのおなじみの唄々。
道沿いのファミリーレストランには、普通の家族が訪れているのだろう。
家の駐車場に着いて、後部座席の息子のベルトを外す。
「ごはん。 帰って父ちゃんと、ご飯食べよう」
何も言わず、座席から降りる息子。
でもきっと頭の中で自分に言い聞かせている。
”どうやらときどきは母ちゃんに会えるらしい” と。
行こうとする息子に「て」と声をかけると、腕に手を組んでくる。
駐車場から自宅までの、信号の見方も少しは覚えてくれたかもしれない。
家人が某病院のストレスケア病棟に入院して1週間。
入院自体は初めてのことではない。
しかし、義母がその道筋を作った前回とは違い、今回は自分がそれを決めた。
そこに到るまでの半年間、子どもを巻き込んで夫婦でさんざん苦しみあった。
家人の入院で生活が大きく変わるわけではない。
もう3年近く、ずっと息子と、いつも手を繋いできた。
家人がこれまでやってきた息子の身支度と洗濯はすることになったけど。
この四月から、会社の配慮もありほぼ完全に仕事は内業にシフトした。
息子といっしょに玄関を出る朝、息子といっしょに我が家に戻る夕方。
人の気配のない我が家に戻る生活を選んだのは自分。
それをいつまで続けるのか、終わらせる基準は何なのか、決めなければいけない。
先のために、今はそうすることがいちばんいいと思って決めたのだから。